●豊穣記
方丈記は鴨長明が書いた無常観の随筆だ。60歳で書いたらしいから今の僕と同じ歳だ。興味が湧いたので読んでみた。とても鋭い視点で面白い。しかしやはり文学的な無常観なので全体的に暗く感じる。
ところで自分の還暦後の制作方法が、まるでこの「ゆく川の流れは…」なのだ。「世の中にある人と住処と、またかくの如し」とあるが、僕の場合、人と住処ではなく、「作品制作、かくの如し」だ。生活的無常観に視点を置かず、作品の無常さを追求楽しんでいる。
つまり今までは川の流れを猫というダムによって堰き止めて、そこから発電してエネルギーを得る制作だった。それではなくこれまでの猫ダムを外し、元の川に戻し、流動的感性による制作に転換したのだ。これは無常観という暗いイメージではなく、同じような意味だけど、カラッとした『プラスマイナスゼロ』になった。この制作方法が僕にとって、作品豊穣に繋がっている。だから方丈記ではなく『豊穣記』なのだ。
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