●一周忌
歯医者の帰りに実家に寄った。母親が「今日が、わかってたんだ?」と言う。なんのことやら? 聞けば今日は父親の一周忌。なんと! 完全に忘れていた。呼ばれたのかもしれない。
生前、父親は僕の作った猫を「へづげたなもの、おまえはおなごの腐ったやつだ!」と言っていた。
父親の仏前に長い間手を合わせ、絵描きに成ったことを伝える。
父親の仏前に長い間手を合わせ、絵描きに成ったことを伝える。
「親父さん。今、新技法で描いた『さざえ堂』という絵を東京で展示している。『さざえ堂』とは、福島県会津の飯盛山にある。一緒に行ったとき、昇っているのに降りてゆくあの輪廻のような名建築物だ。覚えているだろう。
この絵は猫のような癒しでも部屋の飾りでもない。生意気を言えば運慶の仏像と同じで、一般人にはなかなか手が出せない強い気を発する代物だ。自分の作品の中では『猫神様』以来の仏教的な名作だと思っている。たぶん東北の歴史である明治維新、東北震災、原発などの何かしらが自分の魂の内深で疼くのだろう。
親父さんよ、何も無いそこからなら、確実にこの絵の気を感じるだろう。
生きてる時も死んでからも、ありがとうよ!」
0 件のコメント:
コメントを投稿