●空の青
春ですね。空が青い。
小説『自由自在堂』は僕の自伝的小説だが、主人公は僕ではない。主人公は芹沢くんという僕より若い青年だ。僕も芹沢くんもタイトルの画材屋の自在堂に育てられた。まるでゴッホに金銭的援助をした弟テオのような画材屋だった。
昨今はアートで起業したりアートによる地域興しなどが盛んになっている。それはそれで面白いし進めるべきだと思う。僕も廃れつつあった日本文化の招き猫を仏像と組み合わせ復活させた。反面、それではアートの全てが社会や経済に捉われ檻の中だ。アートの大切な面を置き忘れてしまう。そういう狭い檻から果てしなく解き放たれた純粋な精神がアートにはある。このような純粋性に時間の概念は通用しない。だから過去にも未来にも今にも、決して消えることなく存在する。太古からある空の青のようなものだ。
芹沢くんはそんな俗な世間に左右されない純粋な空の青さを持ったアーティストだった。
写真:二十代、来日したジョン・ルーリーのいるバンドのバックの絵を描いた時。
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