2021年5月23日日曜日

[7451] 不足感

 ●不足感

 20代後半、作家を志す知人がいろんな電化製品を買い始めた。大型テレビやオーディオなどもあって貧しさを感じさせない雰囲気にはなったが部屋は狭くなった。なんでこんなものに金をかけ始めたのかを聞いてみた。作家としては思ったように希望は叶わないが、最先端の家電があることで自分が豊かになったと思えると言っていた。それから数年後、湾岸戦争に行って戦いたいと、何かに命を懸けていることで心が満たされるように思うと言っていた。

 問題は不足感だ。昨今の流行りのキャンプやメディテーションで忙しない日常を離れるのもいいが、社会に囚われたままのお金をかけた道具はまるで知人の狭い部屋いっぱいの家電だ。便利なものは空間をいっぱいにして狭くする。狭くなったからと言って不足感がなくなるわけではなく、寧ろ不足感は増える。ものが増えるということは同時に不足という概念が増えているのだ。あれもこれもと欲しがり地球上を掘り起こし作っては捨て破壊し本当に不足しているところを補わず苦しめている限り、大気や水が地球上隈なく循環するように、不足も循環し満たされることはない。



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