[6643] 大蒸発

●大蒸発　Big Evaporation

　これまでワガジンでは『雨にまけるわけがない』と『なぜ猫は幸せを招くのか』で、満足とは何かを示したと思う。そこで今年の夏の個展ではそこのところをもっと明確にできないかと考えている。

　最近電波的情報網を開ければ、どこもかしこも喧々諤々不満分子がわんさと撒き散らかっている。政治的には敵と味方に分断した感情がこめかみの血管を膨らまし俗物図鑑のページを増やしている。分断を合体させようと救いを掲げた宗教的マジシャンたちが魑魅魍魎化し妖怪図鑑の再編を迫られている。元々の鈍感も無知も含めて、こんなに多い不満分子の一つ一つを満足分子に変換するのが進歩なのだが、その進歩思想に急き立てられてしまえばそれは不満分子だ。何もかもが不満分子になり、その解決策がないという不満で充満。

　よくよく考えてみれば不満分子とはplus minus概念の剥ぐべきペリペリ分子が増えたようなもの。そこでエネルギー問題や貧富や非常識、劣等感や過激、偽善・偽悪に言語道断、あれもこれも全部まとめて究極のブラックホールの中に突っ込んで、それら思考を基点とした不満そのものを上下左右前後すっきり音の波として宇宙の果てにふわーっと蒸発してもらう。闘争でも止揚でも逃避でも死でも無でもなく新しい概念として『蒸発』というニュアンスが明解のような気がするのだ。