●坐禅
坐禅との出会い。
2020年、コロナ禍でこれで死ぬかもしれないと思い、自分のこれまでを振り返ってみた。
自分は作家としてこれが自分だと言える作品はあるのか? 答えは「ない」だった。そこで真実の自分の作品を制作しようとアトリエに入った。この時アート制作においての心構えを立てた。
『既成の美術や哲学や思想などを念頭に置かない。作品に対する他人の評価や販売など一般世間を介入させない。先入観や目的・目標を持たずに目の前を見る。何にも捕われないように注意しながら進める』など。
制作した結果、世界のどこにもない図を発見した。これをとりあえず『わ』の図と名付け、言葉にまとめ本にでもしておこうと思い、どうせなら英語にも訳しておこうとアメリカの知人の女性に連絡した。彼女は驚いたことにアメリカの道元道場に通っていた。彼女は現在39歳、去年の暮れに出家した。
彼女と色々話しているうちに坐禅に興味が湧いてきた。そして気付いたのは『わ』の図の立体作品が坐禅の形に似ていることだった。ここで『わ』の図から坐禅する自分と完全に繋がった。
彼女のおかげで彼女の師匠の奥村正博さんの著書を読むことになる。奥村さんは僕より九つ年上で近い世代だ。奥村さんが高校時代に読んで感銘し弟子入りした内山興正の著書『自己』を読む。内山さんはクリスチャンであり禅僧というから面白い、考察が深い。そして内山さんの師匠の澤木興道の本を読む。澤木さんは全く濁りのない人間だった。歴史は遡り、道元、仏陀へと繋がる。この濁りない連綿とした流れは実に清々しい。ますます坐禅に興味が増した。
ちなみに澤木興道の弟子がフランスでレヴィ=ストロースなどに禅を伝えている。レヴィ=ストロースは僕の好きな学者だ。アメリカにはスティーブ・ジョブスが傾倒した禅僧の鈴木俊隆がいて、彼は坐禅を知りたいアメリカ人に、日本に行った時には内山興正がいる安泰寺を勧めていた。スティーブ・ジョブスの好きな言葉「Stay hungry. Stay foolish.(ハングリーであれ。愚か者であれ)」は禅の言葉そのものだ。
このようなことを知ることで、自分のいる時間・空間が明確になり、時空の中心にある坐禅が人々には必要なのだと気づき、坐禅が自分の日常になった。
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