●消極性
朝食をしながら
隣の屋根の雪下ろしを見る。
ダンプとスコップを交互に使い
とてもゆっくり焦らず確実にこなす。
もう何十年もやっているから
コツを知っているのだろう。
雪国の住民にとって
雪掻きは冬の仕事である。
冬のエクササイズである。
雪掻きハイなる精神の解放である。
全ての境界が真白き雪で覆われ
無分別な世界観を諭す瞑想である。
社会は経済を目的とし
分別分断し競争を急き立てる。
積極性とは社会が推奨する
馬の鼻先のニンジンが金だ。
村の発展のために
地元産業云々言うけど
この屋根の上に
生産性は微塵もない。
雪掻きこそ生産性を
超越したところに在る
雪国ならではの奥の深い創造なのだ。
ある極みを見た感じがした。
このおじさんのマラソンランナーのような
雪掻きスタイルを
この消極性を
身に付けようと思う。
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