2020年1月17日金曜日

[6959] 水底

●水底
メダカの鉢を家中に入れている。メダカはだいたい50匹いる。時々猫が鉢の水を飲む。餌をパラパラ落とす。
 まず小さいメダカたちが集まってきて、浮かんでいる餌を待ってましたとばかりに嬉しそうに食べる。その後、中程の大きさのがやってきて大きな餌をパクつくが、多少警戒心があるようで時々隠れる。次に大きいのがやってきて小メダカを威嚇しながら、やはり隠れたりしオドオドしながらも片っ端から餌を食べる。数分後、観察者のワシが痺れを切らした頃に、どでかい奴が一匹やってくる。最初の小メダカの10倍以上あるから、メダカでない魚がいるのかと思ったくらいだ。この巨大メダカは水面の餌にはあまり興味がなく、時々上から落ちてくる土の上の餌を逆さまになって突っつく。妙な奴だ。
 これらを人間に喩えてみた。
 まずは鋭敏な感性の好奇心旺盛な若者が面白いものや新しいものに嬉しそうに飛びつく。そのうち中堅クラスがやってくる。彼らは現場の安全が確認されてからやってくるので、現場の表層しか見てない。離れて見ていた分、現場空間のシステムが少しわかる。そこで計算高く少し大きなことに挑戦する。次に大物クラスがやってくる。彼らは警戒心のオドオドを経済力で補っている。しかし餌が撒かれた瞬間の新鮮な現場を見てないし、功名心があるので場を読むことができないけど支配力がある。そこで現場を感覚ではなく、理屈で捉える。新鮮な餌ではなく冷凍食品を食っているようなものだ。栄養学はわかっているが、生命をよく理解できてない。
 さて、最後にやってきた水底の巨大メダカ。餌が撒かれた時はもう遠い過去で、今は時々猫が水を飲みにやってくる日常に戻っている。現場の新鮮さも挑戦も経済も危険もみな水面という表面で起こっていることなので、彼は水底でひとりのんびり自然に落ちてくる餌を漁るのであった。

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