2023年2月21日火曜日

[8089] 湧水を汲む

 ●湧水を汲む

 早朝4時。僕は薄暗いアトリエで、坐禅の前にカップ一杯の白湯をゆっくり飲む。体をほぐす体操を20分ほどする。それから両手・両膝・額を床につけて下記の『四弘誓願』を小さな声で言う。

 「衆生無辺誓願度・煩悩無尽誓願断・法門無量誓願学・仏道無上誓願成 」

 意味は簡単に言えば「みんなの苦を取り除き(利他)、自分の迷いを消し去り(自利)、山程の教えを学び、悟りに至ることを誓います」と言うもの。

 僕はこれを「みんなに浄く澄んだ水を飲ませるために、とても静かな山奥の湧水があるところに出かけ、湧水の周りや川を掃除し、水がいつまでも流れ続けるように誓います」と理解する。この四弘誓願を言うと、不思議なことに、一瞬のうちに、幸せな感覚に包まれ善人な自分になる。

 請願のあと、壁を前に坐蒲に半跏趺坐で座り、背筋を伸ばし姿勢を調え、口は閉じ鼻呼吸、臍の下の丹田で呼吸している感じにする。目は閉じず開かず壁を見、視線を少し落とす。

 坐禅に入る。これが心が調っている美しい形なので、これ以上何も求めない、得ようとしない。アートで言うならいい彫像が既にできたのだ。何か考えたりするのは彫像に余計なものが入ってしまい、いい彫像でなくなる。それは坐禅ではない。また考え事が湧いてくるだろうがそれは湧き水ではないので放っとく。そんな考えについて行かない。考えない平常心のラインに留める。まるで呼吸をしてないような穏やかな彫像のままを保つ。40分ほど坐る。

 終わったあと、軽く身体をほぐし、両手・両膝・額を床につけて土・水・火・木。金、立ち上がって東西南北上下全てに手を合わせ感謝する。

 浄く澄んだ水の流れは、日常雑念が多いので夕方までには汚れたりする。

 次の朝、また坐って、山奥の浄く澄んだ湧水を汲む。

 






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