2023年6月8日木曜日

[8194] 道なき道

 ●道なき道

 チョコがほぼ90度の10mの崖を降りたのだろうとSSは言う。まさか!

 試しに、僕は崖を降りてチョコの足取りを追ってみた。川の縁を歩く。かなり足元が悪い。砂地だったり木が倒れていたり。くぐったり折ったりしながら進む。考えてみればこれまでここを歩いたことがない、初めての経験だ。家の土地の端に来たので、ここから上に登ろうとしたが背丈ほどの笹や草だらけで登れない。何かの巣がありそうな気もする。少し不安になってきた。この上あたりにカモシカが出没した。狸や貂もよく通る。登るのを止めて進む。最上川の支流の樽石川に出た。川を渡れば容易く道に出られるのだが、流れが強く渡れるところがない。そこで急勾配の竹林を竹に掴まりながらボルダリングするように10mよじ登った。やっと地上に出た。隣の畑を横切り家に戻った。

 家の周りを一周しただけなのに結構興奮、冒険したようで楽しかった。子供の頃、ほぼ引きこもりだった自分が初めて家の周りを回って、隣の池のキレイな大きな鯉を見て感動したことがある。それを思い出した。まるで自分が動かず天が動いているという天動説から太陽を中心に自分が動いているという地動説に意識が進化したような。いやいや、太陽が中心で全てが太陽中心に動いているのではない。太陽も銀河系の端っこだ。銀河もまた…どこにも中心はない。だから天動説も地動説も視点が違えば誤りだ。本質的には自己中心から自己非中心に意識が進化したのだ。

 中心がなければ周りはない。周りがないなら僕が歩いたのは家の周りではなく、道なき道を歩いたのだ。チョコも道なき道を歩くことが楽しいのだ。






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