2023年12月28日木曜日

[8397] 菩薩

 ●菩薩

 一昨日のキリストから仏教の華厳経のある話を思い出した。

「昔、あるところに、早離と即離という幼い兄弟がいました。ふたりの両親は、彼らの成長を見る事なく亡くなってしまいました。途方に暮れている幼い兄弟に、ある男が「両親に会わせてやろう」と優しく声をかけました。兄弟がついて行った先は無人島でした。兄弟はそのまま無人島に置き去りにされてしまいました。騙されて捨てられてしまったのです。

 兄弟は疲れと飢えに絶えながら無人島で何日か過ごしました。しかし兄弟は何も無い無人島でどうする事もできず、死を待つだけでした。

「僕たちは、なんて不幸なんだ! 両親を亡くして、人に騙されて、このまま、人知れず死んでいくなんて」と弟は嘆き悲しみました。

「僕も最初はそう思ったよ」と兄が弟に「でも嘆いていても仕方ないじゃないか。僕たちはこうして親と別れる悲しさ、人に騙される悔しさ、そして、飢えと疲れの苦しさを、他人の何倍も知る事ができた」と兄は言いました。そして兄は「どうだろう? 今度、生まれてくる時は、この経験を生かして、同じ悲しみに泣く人々を救っていこう。他をなぐさめる事で、自分もなぐさめられるんだよ」と弟に言いました。

 兄の言葉を聞いて、弟の心の中にも何かが目覚めました。死を前にして、悲しいという気持ちはなくなり、なにやら晴れ晴れとした気分になりました。

 兄弟はともに誓いをたて、ほどなく静かに息をひきとりました。その死顔はとてもおだやかで静かなほほえみをたたえていました」

◎少し考察。兄は弟の嘆きに対してなぐさめの言葉を与えた。弟はそれをすぐに理解した。ここで兄の名前が『早離』なのは、嘆きのこだわりから早く離れたからだろう。弟の名前が『即離』なのは、兄の言葉を即理解し、自分のこだわりから即離れたからだ。なぐさめるこの兄が慈悲の仏『観世音菩薩』になり、即解る弟が智慧の仏『勢至菩薩』になる。

 猫や犬を飼ったことのある人には猫や犬がこの兄弟菩薩に思えるだろう。猫も犬も営利なく無垢に僕ら人間を癒やしなぐさめる。それに猫も犬も死ぬのが早く実に辛い。あなたもまたどんなに長く生きても人生は短い。ならばやるべきことは自ずと即知れるだろう。なぐさめ即なぐさめられ即救われる。





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