『自由自在堂』を読んだお客さんから「波瀾万丈ですね」と言われた。一瞬、いったい小説のどこの箇所だろう? と思ってしまった。たぶんワシではなく登場人物の他の人のことだね。実はこの本を書くにあたって、なるべく波瀾万丈話や涙話などは避けたのだ。波瀾万丈はワシが書きたい人物像ではない。ワシにはワシの興味の対象がある。すごい小さい微妙な点だけど、そこを追求観察してゆくのが心地良い。波瀾万丈なんかどうでもいい。
人はちょっとだけ自分の殻を破ればそれでいいのだ。
そういやこんな感想をもらった。
「この本のおかげで小説が面白いと知りました。一言で言えば読んで良かったです。初小説楽しかったです!」
生まれてこのかた小説を読んだことのない青年が、『自由自在堂』を読んでの感想だ。小説という世界に足を一歩踏み込んでくれたことが嬉しいじゃないか。殻は破れたのだ。
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