2017年2月21日火曜日

[5900] 脱出

●脱出
 僕は猫を神仏にした『猫神様』を発表し、プロデューサーしてくれる人と出会い、世間に広く認められる作家になった。いろんな作家も加わり、猫業界のような世界を作り、たくさんの猫ファンと一緒に、日本だけでなく海外までビッグニャーンしていった。
 ところで猫神様作って少し経った頃、プロデューサーが「猫神様を超えるものが見たい」と言った。その後、僕はその言葉に捕われ、これでもかこれでもかと新しい作品を提出してきた。初期を超える次のヒット曲が欲しいミュージシャンや次回作を期待される小説家のようだった。僕は家まで猫にして世界一大きな夫婦招き猫を作った。それでも猫神様を超えたようには思えなかった。そのうち「猫神様を超える」というその言葉も過去の話になり忘れてしまっていた。
 ところが天災は忘れた時にやって来るように、ひょいとやって来た。
 この夏、猫神様を超えるものを発表できると思う。
 ふと思った。プロデューサーも猫かぶりから脱出したかったのだ。
 たぶん多くの人も、今、自分が被っているものから脱出したいんだと思う。


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