●変化
実家で母親と二人きりの一泊生活をした。
今年86歳になる母親の行動を眺めてて思った。起きてから寝るまでやるいろんなこと、それに食うもの、それらを行為する時間、全て決まっている。ルーティン、つまり決まり切ったことをほぼ狂い無く毎日繰り返している。その行為が飛ぶ鳥跡を濁さずのように痕跡を残さない。まるで母親などいなかったように元の状態にしっかり収めるのだ。普段、僕が会いに行くと「もう帰れ!」と言うのは、ワシのことを面倒臭い奴と思っていると思っていたが、違ったようだ。母親のルーティンや状況が他人によって乱されることへの拒絶だったのだ。年老いた母にとってもはや太陽の運行や季節以外の変化は必要ないのだ。
僕の一日の生活を眺めてみた。引き籠もって、掃除や水やり餌やり庭仕事、粘土に絵。なんのことはない、ほぼ同じ行動を繰り返している。母親と同じようなものだけど、僕にとっての変化は作品の中で充分に行われている。猫からの脱却で偶然生まれたペリペリなどは人生最大の変化の一つに入る。そのおかげで絵も粘土も充実している。
母親のルーティンを知った僕はそれらを乱さないように協力した。少々快くした母親に「あとどのくらい生きそう?」と聞いたら「一年」、「やり残したことはないか?」「ない」と最近は滅多に笑わない母親が笑顔で答えた。
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