2018年8月10日金曜日

[6435] 大工さん

大工さん
 家を建てたのは9年前の2009年。
 建設中は毎日、父親がやってきて、大工さんと世間話しをしていたらしい。家が建ったあとも父親は犬がマーキングをするように毎日やってきて、僕の仕事の邪魔をした。これは冗談抜きで本当に1日も休まずやってくるのだ。大変迷惑だった。
 あの時の大工さんがアトリエ建設のため久しぶりにやってきた。父親が去年亡くなったことを伝えた。初耳だったらしく、線香をあげに行きたいこと、お母さんは元気なのか? といろんな話をした。大工さんは僕から目をそらし、地面を見ながら「そうか、亡くなったのか」と何度も口にしていた。目が潤んでいた。大工さんはいきなり顔を上げ、そのまま猛暑で雲ひとつない青空を見ながら「オヤジさんはいるな」と言った。僕も青い空を見た。確かにいる。あの責任感が強くしつこい性格の父親なら、死んでもこの建築現場に毎日来ているだろう。間違いなくいるね。

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