2024年8月14日水曜日

[8527] 深い

●深い
 庭パーティに来た二十代若者らは小説など読まないと言う。
 彼らは結果に向かって一つ一つキャリアを積む。それだけでは今が未来の結果のためにあるような、今が希薄だ。経験も人も服も車も知識もなにもかもが結果のための素材や部品になる。死ぬ結果のために今を生きているような。ネットにしたってどんどん新しい情報を追い消費してゆくので、今が希薄だ。それだけでなく本人も社会の部品になる。
 そこで小説や詩だ。小説も結果に向かって話は進むから確かに結果志向だが、自分の時間感覚やリズムで読め、時に違った小説に出会うことがある。面白すぎて読むのが惜しい、もう本を閉じたくなるような本だ。その空気感に浸っている時間が愛しい。結果に疑問を投げかけるような感覚だ。俳句や詩や禅語にも共通するものがある。一般的に「深い」と言われる感覚だ。その感覚から自分の内面に潜ってゆく。意味ではなく無に浸る。
 「うらを見せおもてを見せてちるもみぢ」 良寛
 




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