●メタファー
『猫かぶり』は「本性を現さず、大人しそうに見せること」、ぶりっことか偽善者とも言われる。あまりいい意味では使われない。猫だけに化けの皮を剥がしてやりたくなるが、剥がしたら、たぶん泣かれる、噛みつかれる、引っ掻かれる、刺されるだろう。
では『猫をかぶらない』とは、本性丸出しで怒るわ、切れるわ、暴れるわ、刺すわ、殴るわ、野獣だろうと一瞬思うかもしれないがそうではないだろう。これらを本性と決めたのは、理性のない人間は動物のように本能のままで、まるで野獣、野蛮は嫌いと上品ぶった輩が自らの優越感幻想を固守する為、他と線引きしたかったからだろう。本性が大人しく可愛いく素直だってある。個性があるんだから人それぞれだ。
アリストテレスは「人間とは、自己の自然本性の完成をめざして努力しつつ、善く生きることを目指す共同体を作ることで完成に至る、独特の自然本性を持った動物である」と言った。
僕が自分の作品『オレかぶり』に感動したのは、「可愛い」の上に「気色悪い」が乗ったのもあると思う。一瞬、『猫かぶり』で大人しくしているやつの化けの皮が剥がされて、本性が現れたような心地良さを感じた、自分のね。つまりこの作品は、アリストテレスが言ったように、「善く生きることを目指して」、『猫かぶり』が『猫をかぶらない』を正直に表現したメタファーなのだ。
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