2018年12月15日土曜日

[6562] ポチくん

ポチくん
 16年前の話。ある日の早朝、犬を遊ばせるドッグランのオーナーがやってきて「子猫いらないか?」と言う。その子猫はドッグランが気に入ったらしく他所に捨てても捨ててもドッグランに戻って来るらしい。見に行ったら子猫がデカイ犬どもに囲まれ因縁つけられていた。子猫は猫なのに犬っぽい長い顔を持ったせいか、自分では犬と思っているようで、ワンワン吠える奴らが仲間に違いないとドッグランに来たのはいいが、どうも言葉がニャンニャンとワンワンでは2と1でまるで通じない。何かがおかしい。子猫はやってきた僕を見つめて「ここ違うみたい。頼む、もらってくれ!」と懇願顔。全然可愛くないがちょうど白っぽいのが欲しいと思っていたので連れて帰った。大抵の人がこの子猫を見て「犬?」と言うので、名前はポチくんになった。ポチくんは食い意地が張っている。自分の目の前の餌皿を無視して隣の猫の餌皿に隣の猫を押しのけて食いに行く。隣の方が美味いに違いないと思い込む性格なのだ、同じ餌なのに。もしかしてドッグランにいたのも、猫の隣の種である犬がいいに違いないと思ったのかもしれない。
 今、ポチくんはうちで一番歳取っている猫で16歳7キロ。飯食う時とウンコする時以外はほぼ一日中寝ている。うんこはワシのより太い。遊ぶとか戯れるとか何かに興味を示すとか、なんもない。たまに目を覚まして大声で「あー面倒臭い」「なんだろうね、人生って」などとマイナス思考っぽい音色で喋る。このまま徐々に衰えてゆくだけなんだろうけど、一体なんのために生きているんだろうと思う。そうやって考えりゃ、人間もそれほど変わりない。僕などは起きて飯食ってうんこして仕事して酒飲んで寝る。ほぼ毎日同じことを繰り返している。多分新しいアートのペリペリやったり、ペリバを建築したりしたのは、前向きな活力のある人間として日常的マンネリに抵抗、退屈打破もあるだろうが、この場からもう一段高い広いステージに飛び出し、あの世や天に近い境界が霧散するようなところで奏でられている音楽を観てみたいのだろう。

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