2020年4月12日日曜日

[7045] 春の朝

●春の朝
それは何かをきっかけに意識しないで出てくる思い出なのだが、ストーリー性はなく、その時の空気感だけが蘇り、今のこの空気と繋がり恍惚となる。このような現象は何だろうと考えてみた。思い付くのがフラッシュバックだ。そこでフラッシュバックを調べてみた。PTSDやトラウマなど良くないイメージの説明ばかりだ。僕のは心地良いしかない。たぶんこの現象を宗教的には神秘体験というのだろう。しかしそれでは大袈裟だ。幸福感では面白くないし、エクスタシーでは快楽的すぎる。思い出したのがコリン・ウィルソンの至高体験『春の朝』。まさしく今、僕の庭はこれからが春。ユキヤナギやモモやサクラ・ズオウ・ハナカイドウなどの蕾が鮮やかな色に花開く寸前だ。これらの春の花はここでは他の地方と違ってほぼ一斉に咲く。その一歩前が今だ。
 今朝も『春の朝』現象が何度も起きた。ウグイスの声や他の鳥の囀りを聞いた時、わかめのスープを口元に持っていった時、エスニックの味付けの大根の千切りの香りを嗅いだ時、斜め45度からの日射しと反対側から吹くやや冷たい風双方を同時に感じた時、花の香りが風に乗って冷たい鼻先に届いた時、陽に照らされ眩しく揺れる最上川の波を見た時、そして意識的にできるのが、大きく息を吸い静かにゆっくり吐いたあとだ。

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