●毒蛇
加速主義なるものがある。この社会をガンガン加速して理想社会をさっさと作るというものだ。日本でもムーンショット計画なるものがあるらしい。そんな未来を計画しているからワクチンは焦りすぎだし、オリンピックも焦っているし、やることなすこと強引だし、企業は大量生産・大量消費、ガンガン働かないといけないし、小学校の詰め込み主義じゃあるまいし情報過多で、いつも経済のことを最優先に考えて、経済以外に大事なものなどなく、休んだら補償金が必要だ、やめたら死ぬぞーと脅かされ、何もかも命までもあっという間に捨てられる。先に先にと頭は向かっているので、今は未来のためにある。ある種の集団現実逃避だ。
これに反対した減速主義なるものがある。スローライフ、ローカリズムなど。しかしこの減速主義も結局、加速するための栄養補給のようなものと皮肉られる。生活の中にのんびり休暇やヨガや瞑想時間などを取り入れて、さー、休んだら加速するぞー、働けー、になる。これは今の思考が加速主義になっているからそうなるのだ。
『毒蛇は急がない』という諺がある。大物は焦らないということだ。大物というのはゴジラみたいなもので、彼が焦ったら街を粉々に破壊してしまい禍の元だ。だから毒蛇は急がない、はずなのに、昨今の毒蛇はたまたま金を手に入れた小物なのか加速したがる。早く成果を手に入れたいのだ。強欲な輩はなんでも手に入れたがり、最終的には病気も死も焦って手に入れる。だから死に急ぐことになる。個人の死に急ぎなら個人の勝手だが、社会を死に急がせる必要はない。本当の毒蛇は急がないのだ。
さて加速があって、それに対して減速があるのではない。急がないスローが基底にあっての加速なのだ。本当はスローの前に停止がある。停止した地面があっての加速するロケットなのだ。地面から徐々に加速するのだが、そのうち疲れるから元に戻る。だからメインは停止かスローで、たまたま急いでみただけなのだ。