個展初日に来てくれて『自由自在堂』を買った彼が再び来て言った。
「小説読みました。二度読みました。すごいすごい、ほんとにすごいです。感動しました。最後のシーンはグッときました。泣きそうになりました」
こんなに褒めるヤツはウソつきの類いのように思われそうだが、彼の言葉はワシを泣かせるほど嬉しいのだ。
ワシが東京で初めての絵の個展をやったとき、唖然として見ていた彼はまだ高校生。数年後、彼は映画通になり誰も見ないようなマイナーな珍しい映画をワシに紹介する。ワシがいまだに年間100本も映画をみるのは彼のおかげだ。それから彼は稲垣足穂や写真の世界にハマりカメラマンになり、東京の銭湯や裏道や電柱の電灯などを撮り、自分の美を追求していった。そして今は活き活きと土方をやっている。ワシは彼の精神を非常に美しいと思っている。そこから吐かれた上記の言葉はこの上ない嬉しさなのです。
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