●前人未到
人体実験といえば、素晴らしい青年がいる。僕が企画した一昨年の『最上川芸術祭』にアーティストでもないのに、たまたま珈琲屋で出会い話したらすこぶる面白いので参加してもらった青年だ。
彼は仕事先のボリビアでコロナに感染し高熱。イベルメクチンと血栓予防の薬を服用し、その後喉の痛みから水を飲むのも困難になり入院。強ステロイド服用。軽度の肺炎。16日目に帰宅。
そしてこれから、彼の抗体を検証するために人体実験をやるらしい。まずは今の抗体をチェック。次にシノファーム2回摂取して抗体の伸びを検証。半年空けてファイザーもしくは別のワクチンを接種する。
僕には彼が冒険者に思えた。彼は登山が好きだから、この実験も人類未踏の地へ向かう冒険なのだろう。自分はそんな冒険者ではないが、やはりアートの分野では未踏の地に到達したいので、できうる限りのあらゆる実験をしてきた。わかっていることよりわからないことへの興味だ。そしてその探究心がようやく『わ』の新発見に繋がった。
人はなぜこういう冒険に興味が湧くのか? ブルーハーツの歌『チャンス』にあった。「空前絶後 前人未到 そんなふうな生き方は楽しいだろうな」だね。冒険者はいい意味で地上のこの世に未練もなく執着もなく儚んでいるわけでもなく恨みもつらみもなく、この社会に恩を売るわけでもなく抵抗するわけでもなく、未来の金や生や死に振り回される事もない。この世の濁った我を振り切るためにただただ真っ直ぐに向かう純粋な魂があるように思う。何はともあれ僕らが頼る医術や薬は他の人間や動物による実験検証が行われ今にあることを忘れてはならないと思った。
写真:少し冒険していた20代前半。インドでダンスと世田谷に壁画。
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