2017年2月3日金曜日

[5882] 正直

●正直
 父親が久しぶりにやってきた。車の運転がヘタになったような気がする。
 父親は病院に行って来たらしく、医者に5月にひ孫が生まれるんだと言ったら、医者が「5月かー」と意味深な言葉を吐いたと言う。それで、もしかしたら自分は5月までもたないかもしれないと思い、撲に教えにきたのだ。
 そうか、夏の個展の絵は見れないかもしれない。じゃあ最近できた「オレかぶり」の絵の写真を見せた。どうせ見せてもトンチンカンだろうと思ったら、おっ! と興味ある顔をした。直感に響いた感じだった。なるほどこれはいい絵なんだと思った。そこで少し絵の説明をした。
 撲は二十年以上も猫を被ってきた。それはなんとなく正直じゃない気がしていた。それでその被り物を脱ごうと思った。でもそれを脱いだら、撲が誰だか分らない。そこで猫被りの上にオレを被ってみたんだ。今は売れるとか良いとか悪いとか余計な邪念は捨て、正直に描いているんだ。それがどんな絵よりも自分を生かすんだ。父親はニコニコして帰っていった。
 今、絵はどんどん進化しているが、やはり『オレかぶり』がきっかけでその後の道が示されたんだと思う。しかし『オレかぶり』ができたのはその前に『猫かぶり』があったからだ。そこがとても大事だ。
 だからこそオレなんだ。
 ではいったい誰が猫を被っていたのだろう?

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