●上の壁
去年、粘土で『オレかぶり』という作品を作ってみた。いつものシャレのつもりだったが不思議と新鮮な感動を得た。それは楽しいシャレが一つ増えただけだと思っていた。普通ならこれで終わりで、普段の作品に戻る筈。ところが今にして思えば、真意は忘れたが、この『オレかぶり』が気になったのだろう。その頃はかなり絵にハマっていて自分の絵を模索中だったので『オレかぶり』を何の気無しに絵にしてみた。変わりもののシャレの絵が一枚できただけだった。それほどの感動はなかった。その後は絵の素材やタッチなどを吟味しいろんな絵の実験をし、だんだん自分のオリジナリティが見えてきた。暫くして『オレかぶり』の二枚目を描いてみた。粘土よりいいものができてしまった。するとどうだろう、『オレかぶり』の粘土も最初の絵も、もはや自分にとっては当たり前になってしまったのだ。それから三枚目と続き、もう僕がしているのは『猫かぶり』でもなく『オレかぶり』でもなくなっていた。ステージが上がったのだ。
壁というものは目の前にあるものかと思っていたが上にもあったようだ。その上の壁を突き抜けたのだ。いつもは腕を世界に広げるように横並びの作品を作って個展を開いていた。それは少しはスパイラル的に上にも昇っていたことだろう。でも今は真直ぐ宇宙に向かうロケットのように上に向かっている。そのうち眼下に国の争いがドングリの背比べのように見えることだろう。
絵のタイトル『あ〜、あれが上の壁ね』
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